2022年11月 JCM REPORT 第5回コンクリートの圧送時に潜む危険 | プレス情報 | 近未来コンクリート研究会は、インフラを適切に維持管理することを推進する支援をするとともに、これから建設されるコンクリート構造物を長寿命化するための研究を行います。

プレス情報

2022年11月 JCM REPORT

2022年11月 JCM REPORT
第5回 コンクリートの圧送時に潜む危険

2022年11月 JCM REPORT 第5回コンクリートの圧送時に潜む危険 | 近未来コンクリート研究会
近未来コンクリート研究会 代表 十河茂幸


 コンクリート圧送用のポンプが使用され始めたのは、戦後まもなくですが、高度成長期に生コン工場が多量のコンクリートの供給をできるようになって、打込みも多量になり、圧送量の増加が必要となったからです。その結果、ポンプで圧送しやすいコンクリートとする必要が生じました。施工技術の変化は、コンクリートに要求される条件も変化しますが、変化に対応できないと不具合が生じやすくなります。変化に対応する技術を習得する必要があります。
 今回は、コンクリートポンプ工法の留意点に付いて解説します。
■圧送が困難なコンクリート
 高流動コンクリートや高強度コンクリートの出現により、コンクリートポンプでの圧送が困難にある事例が増加しました。コンクリートの粘性が高く、圧送負荷が増加したためです。これらのコンクリートは逆に材料分離を生じ難いため、高圧で圧送できるポンプがあればむしろ耐久性の高い均質なコンクリート構造物を構築することにつながります。
 ポンプで圧送する場合に、遠距離にコンクリートを運搬できる利点はありますが、長距離圧送も負荷が大きくなり、300mを超える場合は、注意が必要です。また、下向きに圧送する場合は、連続的に圧送する場合はよいとして、断続的な圧送をすると、負圧が作用して、閉塞する場合もあります。下向きに高さがあると閉塞しないような配慮が必要となります。
 圧送に対しては、専門的な知識が必要であるため、登録コンクリート圧送基幹技能者などの資格者の力を借りるとよいでしょう。
■圧送不可に応じたポンプを選択
 コンクリートの粘性に応じて、圧送負荷が生じますが、それは管内圧力損失で計算可能です。管内圧力損失と圧送距離や配管経路などから、ポンプに作用する圧力を算出し、それに安全率を考慮して、この圧力に対応できる最大圧力を有するポンプを選定します。また、輸送管についても圧力を受けたときに破裂しないような耐圧の輸送管を選定しなければなりません。
 管内圧力損失の計算例を一例として図に示しますが、スランプが小さいほど、輸送管の直径が小さいほど、吐出量が多いほど、管内圧力損失は大きくなります。
■コンクリート圧送時に潜む危険
 高圧(約8MPa以上)でコンクリートを輸送するときには、当然危険が潜むと考えなければなりません。ポンプの最大主油圧は約30MPa程度のものもあります。高圧でコンクリートを脈動させながら輸送するので、繰り返し応力をうけて、ブームは疲労する可能性も高いと言えます。しかし、全国調査では、10年以上の経過車の比率は、46.1%と、比較的長期間使用しているのが実情です。ポンプ車も高価であり、圧送単価が比較的低いと新車を買えない事情もあると推察できます。それゆえに、予防的な措置として、日常点検が欠かせません。
 また、圧送従事者の年齢層も50歳以上が36.7%と高齢になり、苦渋作業が一般化しているため疲労は労働者も同様に存在します。かくして、事故の発生率も、建設業に従事する中でも多いと感じる次第です。
■残コンの処理方法
 コンクリートの圧送は効率的な施工ができる反面、輸送管のなかには残コンと呼ばれる余ったコンクリートが存在することになります。型枠内にコンクリートを打ち込むには、少し多めに生コンを注文せざるを得ません。余分に生コンを注文すると、少なくとも最後の1台の生コン車には残コンが残ります。このような残コンは廃棄せざるを得ないわけです。残コンをどのように処理しているかを調べると、現場内に処理をするのが適当であると思われますが、生コン車に戻して集積場所で処理しているのを合わせると約93%との報告があります。これらが廃棄物となれば、SDGsとして不適切と言わざるを得ません。
 有効利用の方法も提案されていますが、いまだに残コンの多くは廃棄されているのが実態です。今後の課題と言えます。

【参考文献】
1)全国コンクリート圧送事業団体連合会編:最新コンクリートポンプ圧送マニュアル、2020年11月
2)全国コンクリート圧送事業団体連合会編:令和2年度経営実態アンケート調査報告、2021年10月
3)日本コンクリート工学会編:残コン・戻りコンの発生抑制及び有効利用に関する技術検討委員会報告書、2012年1月