日経コンストラクション 2023年2月号 人気資格、合格への道 | プレス情報 | 近未来コンクリート研究会は、インフラを適切に維持管理することを推進する支援をするとともに、これから建設されるコンクリート構造物を長寿命化するための研究を行います。

プレス情報

日経コンストラクション 2023年2月号

劣化要因・構造物ごとに語句を整理

 「コンクリート診断士試験の難度は非常に高い。コンクリート構造物の仕組みだけでなく、劣化メカニズムや補修技術といった施工後も見据えた広範な知識が求められる」。十河塾を主宰し、同試験の受験を指導する近未来コンクリート研究会の十河茂幸代表は、こう話す。
 コンクリート診断士の試験は、四肢択一式と記述式で構成される。択一式では、「変状・変化」「調査手法」など4分野から計40問出題。記述式では建築と土木の2分野のうち、いずれかを選び、構造物の劣化状況からその要因と対策を1000文字以内でまとめる。択一式と記述式のいずれも時間をかけた学習が必要だが、特に記述式の出来が、合否を分ける要素となりやすい。長文を書き慣れておらず、苦手意識を抱く受験者が多いからだ。複数の劣化要因が潜む問題が出るなど択一式より難しい。

 「記述式では、重要なキーワードが散りばめられているかが採点基準になっていると推測できる。劣化要因や構造物ごとにキーワードを覚えることが、記述式突破のカギを握る」と十河代表は語る。例えば、記述式では最近の傾向として、塩害とアルカリシリカ反応(ASR)、凍害、中性化の4つの劣化要因がよく出題される。土木分野であれば、特に塩害の出題が多い。少なくとも、その4つの劣化要因については、それぞれ「調査項目」「調査方法」「判断基準」「補修の要点」といった事項ごとに、重要なキーワードを覚えておく。
 塩害ならば、「調査項目は塩化物イオン濃度分布、調査方法は外観調査、判断基準は鋼材位置における塩化物イオンの量、補修の要点は耐力低下の程度に応じた補強」などと整理する。同様に、橋梁(橋脚)やダムなど代表的な構造物ごとには、重要な劣化要因をまとめる。例えば橋梁(橋脚)では、「中性化、塩害、鋼材腐食、ASR、膨張量」などをキーワードとして挙げておく。

■似たような出題パターンが続く
 記述式では、調査などで構造物の劣化要因を正しく診断する他、補修など維持管理計画を立てる能力も問われる。劣化した構造物の写真を提示し、調査方法や補修方法などを問う問題だ。これまで似たような小問の構成が続いている。過去間を繰り返し解いて問題に慣れておく。
 記述式では分かりやすい文章を書く能力も求められる。採点者に解答を正確に理解してもらえなければ得点できない。過去問などで解答案をまとめたら、第三者に見てもらうのが得策だ。
 ここまで、記述式が合格のポイントだと強調してきたが、あくまでも択一式で一定の正答率を挙げることが前提だ。択一式は記述式よりも学習しやすいだけで、重要度に変わりはない。合格のためには、年度によって多少変化するが、択一式で7割前後の正解が必要だとみられる。

 「記述式の学習に力を入れるあまり、択一式の学習をおろそかにしないように注意したい」(十河代表) 。択一式の過去間を最低5~6年分解くことで、記述式に必要な知識もインプットできる。択一式と記述式はバランスよく学習する。

 十河代表は日本産業規格(JIS)をはじめ、コンクリート構造物に関連する規格や基準の変遷、その内容を学ぶことも必要だとアドバイスする。択一式と記述式の双方で、そうした変遷を知らなければ解けない問題が出題されるからだ。例えばASRの抑制は、1986年にJIS制定で対策が定められた。過去に記述式で、施工時期から劣化要因としてASRの可能性があると推定させる問題が出た。JIS制定の時期を知らなければ、正答は難しい。

合格率は16%前後を推移

 コンクリート診断士は日本コンクリート工学会が2001年に創設した民間資格だ。コンクリート構造物の健全性を適切な点検・調査に基づいて診断し、合理的な補修・補強を行うための技術者の養成を推進する。維持管理の重要度が増すなか、需要が高まっている。国家資格ではないものの、難易度が高く、合格率はここ数年16%前後で推移。22年4月時点の登録者数は1万4336人だ。勤務先の業態別では建設会社、コンサルタント会社に次いで、自治体などの登録者が多い。国土交通省の技術者資格登録制度では、コンクリート橋や鋼橋、トンネル、道路土工構造物(シェッド・大型カルバートなど)の点検・診断業務に登録されている。

 受験するには、大学卒業後4年以上、または高校卒業後8年以上のコンクリート技術に関係する実務経験などが必要となる。いずれもコンクリートに関する科目を在学中に履修していることが条件だ。コンクリート主任技士や同技士、技術士、RCCM、土木学会認定土木技術者、コンクリート構造診断士などの資格保有者ならば、学歴や実務経験を問わず受験できる。

■eラーニンク修了後に受験申し込み
 試験日は、21年度までコロナ禍で変則的だったが22年度からは例年通りの7月に戻った。そのため、23年度は、受験者に受講が義務付けられる診断士講習の受付期間が早まり、申し込みは既に2月13日に締め切っている。

 診断士講習は、学歴と保有資格のどちらに基づいて受験する場合も事前に受講する必要がある。20年度に会場での受講からeラーニングヘ完全に移行した。感染対策の面だけでなく、時間や場所を選ばず受講できるなど参加しやすくなった。受講料は、テキスト代込みで2万3000円。基礎編を約5時間、応用編を約4時間かけて学ぶ。テキストの章や節ごとに区切って受講できるので、各自のペースに応じて学べる。

 試験は、受講後に発行される修了証を添えて申し込む。修了証は2年間有効だ。