2018年1月1日 中建日報 JCMA幹部に聞く『コンクリート構造物の補修・補強フォーラム』の近況と今後 中建日報 | プレス情報 | 近未来コンクリート研究会は、インフラを適切に維持管理することを推進する支援をするとともに、これから建設されるコンクリート構造物を長寿命化するための研究を行います。

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2018年1月1日 中建日報

JCMA幹部に聞く
『コンクリート構造物の補修・補強フォーラム』の近況と今後
H29フォーラムは6000人超動員

2018年1月1日JCMA幹部に聞く『コンクリート構造物の補修・補強フォーラム』の近況と今後 中建日報 | 近未来コンクリート研究会
 コンクリート構造物の老朽化の問題が年々深刻さを増す中、(一社)コンクリートメンテナンス協会(JCMA)による広島県発祥の全国講演会『コンクリート構造物の補修・補強に関するフォーラム』は、国土交通省や各地方の大学、研究機関なども巻き込んだ大きな流れとなり、存在感を高めている。そこで、同会の徳納剛会長、十河茂幸顧問、江良和徳技術委員長にフォーラムを中心とした「正しい補修・補強知識」の普及活動の近況や今後の展望について語ってもらった。

―まず、これまでのフォーラム開催実績と近況について。
 江良 JCMAの設立は平成23年度だが、前身団体時代も含めると、フォーラムの歴史は約10年。当初は年間2~3会場だったものが、全国開催となった年度には28会場となり、その後は徐々に絞りつつも動員数は年2~3割のペースで増え続け、今年度は14会場で延べ6000人(申込み数は約8500人)を突破。特に近年は、各地方整備局がある8都市に沖縄、札幌を加えた10会場を基本とし、主要会場は2日間開催というスタイルが確立され、熟練度も上がった。今年度からは建築向けのフォーラムも開始したし、来年度以降もこれらをベースに開催する予定だ。
 徳納 会場数の増減がありつつも、申込み数が増え続けていることは素直に嬉しい。よく集客方法を聞かれるけど、例えば業界団体を通じて動員をかけたりはしていない。ただ、これまでの経験である程度のコツは掴めたかなというのはある
 十河 少しずつ増えているのだから、実績や評判の積み上げも大きいのでは。色々な業界人に話を聞いても、フォーラムの知名度はかなり浸透している。
 江良 毎年予告は早い段階で出すけれど、申込み受付は4月1日から。初日で1000件以上が殺到するので、「待っててくれてたのかな」という思いはある。
 徳納 会場の都合で断らざるを得なかったケースもあった。今後はそうならないよう改善も必要だ。

―好評の理由は。
 十河 特定の技術だけに偏っていないことじゃないかな。メンテナンスに関わるあらゆる技術を聞けることが、参加者が増える理由だと思う。中立性は大事だし、その辺は上手にされている。
 徳納 色々な技術を紹介した上で、技術者に選択できる知識を得てもらうことを目的にしている。「補修は材料から入ると絶対に間違う」との思いからで、塩害ひとつとっても、塩分を中に入れないようにするのと、入った上で何とかするのとではまったく違う。劣化メカニズムをきちんと理解した上で、選んでもらうことが重要なので、われわれが推奨してきた亜硝酸リチウムの技術とはライバル的な位置づけにある電気防食の協会にも数年前から講師として参加していただいている。ご協力に感謝を申し上げたい。
 十河 参加無料だし、聞く側にとってはこれほど都合の良いものはない。ひとつの団体だけでやる場合は主催者の都合の良いことばかり言えるが、JCMAフォーラムではそうはいかないし、内輪の慰労会のような雰囲気も一切ない。参加者は純粋に勉強をしに来て、技術のお土産持って帰る。きわめて健全なフォーラムだと思う。

―今後の展開はどう考えますか。
 江良 これまでの経験で、参加者のレスポンスや問合せに温度差を感じる。例えば、東北や北海道は凍害の深刻さが懸念される一方で、ASRがないと信じられてきた時期がある。もちろんそんなことはなく、むしろASRが多い地域なのだが、補修や調査・設計のの蓄積がないため、われわれの「こうするべき」という提案が伝わらなかったりする。
 徳納 それはある。特に沖縄と北海道は地域性が大きい。歴史に比例してASRの問題もあるが、調査の仕方が広まっていないし、調査できる試験機関も少ない。歴史や石の性質を考慮しても、地域による差は明らかに感じる。講師の方々が話す内容も、地域によっては伝わっていない可能性もある。
 江良 肌感覚というか、聞いている人の表情や雰囲気である程度わかるので、言葉の使い方やペース配分の調整はする。地域ごとに講演内容を変えるのは難しいが、プログラムの組み方やフォローの仕方をもっと考える必要がありそうだ。
 十河 補修技術を中心に据えるのは良いが、補修をどうするかという前段階の話が少し足りないのかもしれない。点検、調査までやっても、そこから診断、補修に値するかどうかの判断は専門家でも難しいことがある。専門家で難しいことを国や自治体の担当者が判断できるとは思えない。他方ではAIなど雲の上のような話もされているが、現場はもっと切実だ。今後、役所からの参加者はもっと増えるのではないか。彼らが一番困っているのだから。フォーラムでもそのあたりの方向性を示してあげると良いかもしれない。

―補修全体の向上を考えた場合、業界同士の連携も鍵となります。他業種の連携を目指して十河氏が昨年立ち上げられた近未来コンクリート研究会の近況は。
 十河 多忙で当初想定よりも時間がかかってしまったが、役所やコンサル、生コンや関連団体の方々にも声をかけ、11月末に各団体のキーマン15人ほどで初の準備会を開催した。具体的な活動内容では、初期ひび割れの防止に向けた連携を探る「ひび割れ抑制研究協議会」(仮称)、補修について考える「維持管理研究C協議会」(同)、i―Conを中心とした「生産性向上研究協議会」(同)の3つを想定しており、4月に予定する設立総会後、各協議会ごとに3カ月に一度程度の会合を開き、2~3年をメドにある程度の方向性を出す予定だ。複数の協議会に所属すれば毎月のように会合があるので大変だが、問題解決のためには民間の頑張りは重要だし、官庁も変わるべきだ。なお、営利目的ではないので、必要経費だけで参加できる形にし、協力団体がいてくれれば助かる。
 江良 われわれもこれまで、徳納会長の思いを具現化するための方策を伝えてきたつもりだが、一方通行になっていることは否めない。十河氏のネットワークによって見えてこなかったことも見え、レベルアップが一気に加速するかも。勉強にもなるし、期待している。
 徳納 色々な勉強会で意見が出ても、それが実際の現場に反映されていないことも多かった。十河氏の研究会では、ひび割れ、保全など発注者と設計者、材料業者らが対等に協議し、現場の問題を解決しようとしている。2~3年後を待たずにすぐに役に立つこともありそう。ただ、十河氏にはコンクリートだけじゃなく、自身の健康寿命も延ばすようにしていただかないと。

―最後に、維持管理全体の発展への期待を込め、一言ずつお願いします。
 十河 近未来コンクリート研究会では、施工者、設計者、発注者等が単独では解決できない問題について、みんなで協力して取り組みたい。コンクリートは基本的に壊しちゃダメ。そのためには最初から健全なものを目指すべきだし、図らずも健全な状態でなくなってしまった場合は延命化を図って健康にしなくては。これまでの社会資本を安全・安心・快適にするため色々なところで進言してきたが、お互いに意見を出し合い、私の目が届く近い未来で広島からひび割れをなくすための方策などを考えたい。未来ではなく近未来。会の名前の由来でもある。
 江良 補修は、詳しい人は詳しいが、訳が分からないままやっている人もいる。全体の底上げ、平準化を目指す上で少しでもお手伝いをしたいというのが私の思い。JCMAの活動でもそこを追求していくし、その延長線上で地域性が問題になるなら補完し、土木と建築の溝も埋めたい。ベースとなるのは、維持管理をどうするかの共通認識。また、そのベースアップを図っていきたいと思っている。
 徳納 コンクリートは3つの切り口が重要とつ考えており、1つ目は土木と建築、2つ目は地域差、そして3つ目がRCとPCだ。PCの調査・補修は昨年のフォーラムでも取り上げたが、今年は時間も拡大し、力を入れる。各地域のニーズにも合わせながらわれわれの思いを理解していただき、わが国のコンクリートが健康で長寿命化できるよう努力するので、どうかよろしくお願いしたい。

―ありがとうございました。